フタマタクワガタ属 (Hexarthrius) は昆虫綱甲虫目クワガタムシ科に属する分類群
雄の体長が100mmを超える種を含み、大型種の多い分類群である。
雄の大アゴ先端が二股になっていることが属和名の由来だが、本属の全ての種がこの特徴を有するということではなく、本属のみに該当する特徴でもない(シカクワガタ属やミヤマクワガタ属なども二股状の大アゴを持つ。)。
シカクワガタ属やノコギリクワガタ属に近縁のグループであり、前者と似通っているフォルスターフタマタクワガタや後者と似通っているビタリスフタマタクワガタなど、形態的にいずれの属に近い種もあるため統一性は低いが、学名の"Hexarthrius"が
"六節"を示す通り、6つの片状節を持つ触角が本属全種に共通する特徴である。
(このような触角を持つ分類群は他にも幾つかあるが、どれも姿が大きく異なるため区別は容易い。)
雄はとても気性が荒い。雌は飼育下では産卵木に産卵し、幼虫もそこで孵化、成長する。但し、本属幼虫は発酵マットでも菌糸ビンでもよく育つ
主に東南アジアに分布し、日本には生息していない。
キルヒナーフタマタクワガタ(H. kirchneri)はパリーフタマタクワガタとマンディブラリスフタマタクワガタの自然交雑個体であり、学名はH. p. paradoxusのシノニム。
アンドレアスフタマタクワガタ(H. andreasi)もパリーフタマタクワガタとリノケロスフタマタクワガタの交雑個体と思われる。
主流に従い、ここはH. andreasiを含む15種としてリストする。
H. parryi パリーフタマタクワガタ本属の代表的な種、太い大アゴの先端は二股となり、頭部背側に一対のコブを持つ。前翅の色から「セアカフタマタクワガタ」と
原名亜種H. p. parryi インド北東部H. p. deyrollei タイ北部・ミャンマー南東部H. p. elongatus ボルネオ島H. p. paradoxus スマトラ島・マレー半島H. mandibularis マンディブラリスフタマタクワガタ大アゴは長く伸ばし、本属の最大種。ギラファノコギリクワガタに並ぶ世界最大のクワガタムシの一つである。
原名亜種H. m. mandibularis ボルネオ島H. m. sumatranus スマトラ島H. rhinoceros リノケロスフタマタクワガタ姿はマンディブラリスフタマタクワガタと似ていてその次に大型。頭楯によく発達した突起があり、その特徴からハナダカフタマタクワガタとも呼ばれる。大アゴはH. mandibularisより湾曲し、最大内歯は先端寄り。
原名亜種H. r. rhinoceros ジャワ島H. r. chaudoiri スマトラ島H. r. sadaoi パガイ島H. andreasi アンドレアスフタマタクワガタスマトラ島西部。パリーフタマタクワガタとリノケロスフタマタクワガタの交雑個体と思われる。
H. aduncus アドゥンクスフタマタクワガタバングラデシュ、ミャンマー。ヒメフタマタクワガタとも呼ばれる。前翅は赤く、大アゴは直線的に伸ばす。H. davisoni ダビソンフタマタクワガタインド南部。上記と下記の種と似ているが内歯の配置は異なる。大アゴは少し弧を描くように湾曲し、光沢があり、両側は角ばる。H. vitalisi ビタリスフタマタクワガタ南東アジア北部辺りに分布する。上記の2種と似ているが内歯は少ない。基部内歯は板状、大アゴ先端付近は少し外側へ屈曲する。
H. bowringi ボーリンフタマタクワガタ大アゴ基部が太く発達している。飼育下の孵化率は低いため、本属の中でもブリードの難しい種とされる。
H. b. bowringii ヒマラヤ山脈南東部H. b. baminorum インド北東部H. forsteri フォルスターフタマタクワガタワインレッドの様な赤い体色を持ち、姿はシカクワガタ属と似ている。原名亜種H. f. forsteri アッサム州周辺。
H. f. kiyotamii ミャンマー。H. f. nyishi インド北東部・メンリン県。H.howdeni ホーデンフタマタクワガタフィリピンに生息する唯一のフタマタクワガタ、体長は大きくても60mmほどの小型種で、ヒラタクワガタのような顎を持つ。H. melchioritis メルキオリティスフタマタクワガタミャンマー北部。オスは暗くやや赤味を帯びる、前翅に光沢がある。H. mniszechii ムニスゼッチフタマタクワガタバングラデシュ・ミャンマー。H. melchioritisより赤味と前翅に光沢は弱い。H. nigritus ニグリトゥスフタマタクワガタタイ。黒一色のパリーフタマタクワガタの様な姿を持つ。H. buquettii ブケットフタマタクワガタジャワ島。H. nigritusとよく似ているが前胸部両側は直線的。他にも「カニガタフタマタクワガタ」「カドアゴクワガタ」などの和名を持つ。H. sanuchi サヌチフタマタクワガタカンボジア。H. nigritusの様な大アゴと頭楯に加えてパリーフタマタクワガタの様な胴体を持つ。前翅は黄紋や黒一色の変異がある。